日本中どこでも普通に売られているパン。
1年通して、その味は全く同じだと思っていませんか?
実はそれぞれの時期において、パン職人がパンに使う水の温度が微妙に違います。
この水の温度は、パン作りにおいて非常に重要で、イースト菌の働きにも関係してきます。
また、パンは水の温度だけではなく、湿度や水の硬度にも影響します。
水を牛乳に置き換える場合は、さらにちょっとした工夫が必要になってきます。
今回は、そんな常に四季を感じているパンには、どのような水と温度が適しているかまとめてみました。
パンで使う水の役割は?
パンの種類によっても異なりますが、基本的なパンの材料は、主に以下のとおりです。
- 強力粉
- ドライイースト
- 砂糖
- 塩
- スキムミルク
- 水
- バター
この時、水の役割は主に以下の2つです。
生地の粘りと弾力を生むため
水は強力粉・砂糖・塩・ドライイーストといった粉類の後に加えます。
こうすることで、粉類に含まれているタンパク質がグルテンに変わります。
このグルテンが
パンの生地の粘りと弾力
を作り出すのです。
グルテンがドライイーストを包むことで、発生する炭酸ガスも包み込まれ、よりふっくらした生地に仕上がります。
生地の硬さを調節する
生地が硬すぎると、膨らみが悪い硬いパンになってしまいます。
生地に少しずつ水を加えることで硬さを調節できます。
これら以外にも、
- 生地自体の温度の調整
- イースト菌の働きを助ける
等の役割があります。
パンの水の入れ方は?
パンを作る際、粉類→水の順番にボールに入れていきます。
その際、水は粉類の中央を少し窪ませて1度に注ぎます。
捏ね始める前に塩やドライイーストに水の影響を及ぼさないためにも、粉類は周辺にまとめ、水は中心にと分けるようにします。
パンに最適な水の硬度とは?
パン作りには、水の硬度も重要です。
適切なのは
50~120ppmのやや硬水
です。
水が軟らかすぎると、グルテンも軟化してべたついた生地になり、逆に硬すぎるとグルテンが硬くなり発酵に時間がかかりパサパサしたパンになってしまいます。
日本の水は軟水なので、パンを作る際にはミネラルウォーターを購入するのが良いでしょう。
仕込み水の適切な温度はどのくらい?
水と言っても、どんな水でも良いわけではありません。
水の温度が低すぎるとイースト菌が働かず、高すぎるとイースト菌の機能が低下してしまいます。
そのため、水も適切な温度を保たないといけません。
イースト菌は
30~40℃くらいが最も活動的になる
と言われています。
パンは28~30℃に捏ね上げるのがよいとされていますが、室温つまり四季によっても適切な水の温度は変わります。
四季ごとのおおよその目安が以下のとおりです。
季節 | 春 | 夏 | 秋 | 冬 |
温度(℃) | 30~35 | 20~30 | 30~35 | 35~40 |
湿度はどれくらいが良い?
パン作りには生地の水だけではなく、空気中の水つまり湿度も重要です。
理想的な温度は60~70%です。
これは、じめじめとした梅雨や浴室の中と同じくらいの湿度になります。
この湿度が低いと生地が乾燥してまとまらないので、適宜エアコンや加湿器で調節しましょう。
水の代わりに牛乳を入れたらどうなる?
パンの種類によって、水の代わりに牛乳を入れることがあります。
こうすることで風味やパンの色づきが良くなります。
ただし入れる際にはいくつか注意点があります。
牛乳には固形分が含まれている
牛乳は約10%が固形分です。
そのためレシピ通りに牛乳を使用すると、水分が足りなくなり硬いパンになってしまいます。
牛乳を使用する際は、レシピに載っている水の量より10%多めに使うようにしましょう。
調整牛乳だと風味が変わってしまう
低脂肪牛乳等の調整牛乳を使用すると、牛乳パンのメリットである風味や色づきが変わることがあります。
使用するなら
成分無調整の牛乳
を選びましょう。
牛乳も水と同様に温度に注意
牛乳を使用する際、人肌くらい(約40℃)の温度にするのが良いとされていますが、ただその温度にすれば良いという訳ではありません。
1度沸騰させて冷ましておく必要があります。
牛乳には元々イースト菌を殺す「カゼイン」という成分が入っており、そのまま使用するとパンが膨らまない原因になります。
1度沸騰させることでその成分を消すことが出来ます。
まとめ
いかがでしょうか?
パン作りにおいて、水の温度は大きな役割を果たします。
また、温度だけではなく、入れ方や湿度・水の硬度も関係してきます。
牛乳を使用する場合も同様です。
日本に四季と同じように、パンも1年を通して温度と湿度を感じている繊細な食べ物です。
その分作るのに時間と手間がかかりますが、出来上がった時の嬉しさはそれ以上でしょう。
以上のことに注意しながら、楽しいパン作りライフを送ってくださいね。
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